本記事はDevSquad「103 SaaS Statistics and Trends for 2024」を著者であるPhil Alves氏に許諾をいただき、弊社にて翻訳・加筆したものです。
SaaSのビジネスモデルは、その登場以来、たくさんの成功を収め、多くのビジネスに革命をもたらしています。なぜ多くの企業がSaaSモデルを採用しているのでしょうか?
それは、柔軟な支払いオプション、アクセシビリティ、スケーラビリティ、セキュリティ、アップデートの一貫性、コラボレーションの容易さなど、シンプルで便利な機能に魅力を感じているからです。
SaaS市場は現在も大きいですが、今後数年でさらに大きくなるでしょう。2023年のSaaS市場規模はすでに約1970億ドルで、2024年には2320億ドルに達すると予測されています。
2024年、SaaSはさらに何を期待できるのでしょうか?
SaaS市場の統計とトレンドを探ることで、この疑問にお答えします。これらの統計とトレンドは、業界としてのSaaSを理解し、それがあらゆる規模の企業にどのような影響を与え、どのようなビジネスチャンスが待っているかを理解するのに役立ちます。
- The state of the SaaS industry:SaaS市場の現状
- SaaS市場は活況、多くの企業がSaaSをビジネスの一部として選択している
- SaaS growth statistics:SaaSの成長統計
- SaaS市場が地域やプラットフォームを跨って成長している
- 2024年は成長を妨げる外部要因に注意する必要がある
- Pricing statistics for SaaS:SaaSの価格統計
- SaaS企業は顧客により良いサービス提供するために様々な価格戦略を採用
- Adoption of SaaS:SaaSの導入
- 過半数の企業が2024年にSaaSの導入計画、導入時には複数アプリを利用か
- SaaSの導入拡大には政府機関も含まれる
- クラウド技術を使いこなす企業が増えている
- 企業やCIOは、クラウドベースのSaaSの特徴に魅力を感じている
- 企業は特定の理由から年間予算にSaaSを組み入れている
- Churn statistics in SaaS:SaaSの解約
- SaaSビジネスの解約は主要顧客層によって大きく異なるが、業界標準は存在
- より大きな契約を持ち、より多くの収益をあげる企業は、解約が少ない
- 優れたSaaS企業は解約が少なく、収益が多いため、より速く成長できる
- SaaS sales and marketing statistics:セールス&マーケティング
- 販売期間や契約期間は企業によって異なる
- 無料トライアルを成功している企業は顧客にすぐにコミットさせていない
- 営業チームはパーソナライゼーションにより、より多くのリードを獲得している
- SaaS企業は技術的な専門用語を減らし、創造的で示唆に富むコンテンツを作成
- 北米は他地域のSaaS企業にとって、依然として重要な市場である
The state of the SaaS industry:SaaS市場の現状
SaaS市場は活況、多くの企業がSaaSをビジネスの一部として選択している
2023年に企業が使用するソフトウェアの70%以上は、SaaSアプリケーションである。
78%の企業が機密データをSaaSアプリケーションに保存しており、54%の企業が生産性向上のためにSaaSツールを選択している。
2025年までに、ビジネスアプリケーションの約85%がSaaSベースになるだろう。
企業代表者の73%が、ビジネス目標を達成するためにSaaS製品を利用している。
53%の企業がすでにSaaSソリューションを利用しており、80%の企業が2025年までにすべてのシステムをSaaS化する予定。
ガートナーは、 2023年におけるSaaS支出(2000億ドル)が、2024年には18%増加すると予測している。
SaaSを利用している企業の86%が、従業員エンゲージメントが高まったことを経験している。
北米は、SaaSの普及という点で最も成熟した市場である。
99%の企業が少なくとも1つのSaaSソリューションを利用している。
Source:DevSquad「103 SaaS Statistics and Trends for 2024」
SaaS growth statistics:SaaSの成長統計
SaaS市場が地域やプラットフォームを跨って成長している
SaaS企業は100カ国以上で事業を展開している。
米国には2023年時点で17,000社(他のどの国よりも多い)のSaaS企業が存在し、4,016億ドルの売上を生み出す約590億の顧客を全世界に抱えている。
2023年には、イタリアのSaaS企業が415億ドル、英国が266億ドル、オーストラリアが160億ドル、インドが151億ドル、ドイツが138億ドルの売上を生み出した。
世界のSaaS市場は、2023年の2,735億5,000万ドルから2030年には9,082億1,000万ドルへと、年平均成長率18.7%で成長すると予測されている。
米国のSaaS産業は2025年末までに2250億ドルに成長し、2020年から2025年にかけて100%増加すると予測されている。
企業が使用するSaaSアプリケーションの平均数は、2020年の80から2022年には130に増加した。
2024年は成長を妨げる外部要因に注意する必要がある
SaaSの自動化、展開の迅速化、敏捷性の向上がSaaS市場の成長を促進している。
しかし、サイバー攻撃や熟練労働者の不足が 市場の成長を妨げる可能性がある。例えば、 Cloud Security Alliance(CSA)は、SaaSの設定ミスがセキュリティインシデントの63%を引き起こしたと述べている。
データ・セキュリティの欠如は、SaaS市場の成長を妨げる恐れの原因となる。組織は機密データの61%をSaaSアプリケーションに保存しており、そのほとんどが少なくとも1回はサイバーセキュリティ侵害を経験している。
Point:競争力を維持するために、企業はSaaSに注目している。アクセシビリティ、拡張性、導入のしやすさから、SaaSの利用や導入を計画する企業が増加している。
Pricing statistics for SaaS:SaaSの価格統計
SaaS企業は顧客により良いサービス提供するために様々な価格戦略を採用
年間サブスクリプションプランが最も人気のあるSaaS課金オプション(42%)であり、次いで月額プラン(36%)、四半期プラン(11%)となっている。
SaaS企業の42%が月額プランと年額プランを提供している一方、26%が月額プランのみ、18%が年額プランのみを提供している。
SaaS企業の40%は年間割引を提供し、48%は無料プランを提供している。
SaaS企業5社の内3社が何らかの形で使用量ベースの価格モデルを提供しており、2023年末までにSaaS企業の74%が同モデルを提供すると予測されている。
別の調査によると、SaaS企業の39%が価値ベースの価格設定を好み、38%が使用量ベースの価格設定を好むという。
SaaS企業の29%は割引をほとんど行っていないと回答しているが、39%は時々割引(10~25%割引)を行っている。
5万以上のSaaSベンダーが、顧客に30%オフ以上の割引を提供している。
無料トライアル期間は平均14日間だが、業界によってはもっと短い、あるいは長いトライアル期間を設けているところもある。例えば、金融アプリケーションは通常30日間の無料トライアルがあり、ソーシャルメディア管理SaaSツールは7日間のトライアル期間を提供している。
ほとんどのSaaSビジネスは、3つのサブスクリプションレイヤまたはプランを提供しており、新興企業の93%は、最も安いものから最も高いものまで料金プランをウェブサイトに掲載している。
Point:SaaS企業は、顧客に応じた価格戦略を選択する。モデルを決定するためには、ユーザー数、ソフトウェアの価値、そして顧客の使用頻度の3つを考慮する必要がある。
Source:DevSquad「103 SaaS Statistics and Trends for 2024」
Adoption of SaaS:SaaSの導入
過半数の企業が2024年にSaaSの導入計画、導入時には複数アプリを利用か
SaaS企業の40.43%では、顧客のオンボーディングにかかる時間が1日未満であり、価値実現までの時間を短縮している。
SaaS企業の顧客数は平均約36,000人だが、主にSMB向けに販売する上場SaaS企業のユーザー数は85,000人を超える。
73%の企業が、SaaSがビジネスの目標達成に不可欠だと考えている。
組織は平均して371のSaaSアプリケーションを使用しており、これは2021年以降32%増加していることになる。
従業員1人当たりの平均SaaS利用額は9,643ドルで、中小企業の方が大企業よりも高い。
2017年、クラウド・ワークロードはデータセンターのワークロードの86%を占めた。2021年には、この数字は94%に達した。
SaaSの導入拡大には政府機関も含まれる
現在、米国政府機関の50%以上がクラウドを利用している。
2019年には、政府ITリーダーの51%がクラウド移行戦略を策定しており、最近の調査では53%がクラウドアプリケーションとサービスを導入している。
政府のクラウドへの支出は年々増加しており、2022年だけでもNASAが2億5700万ドル、SSAが1億9100万ドル、財務省が3億9800万ドルを費やしている。
クラウド技術を使いこなす企業が増えている
2022年のSaaSアプリケーション利用率は2021年を18%上回った。
2022年の調査では、回答者の50%が今後2年以内に利用するクラウドプロバイダーの数を増やす予定だと回答した。
エンタープライズ企業の68%が、自社をSaaS利用者の「中級」または「上級」と考えている。
エンタープライズ企業の16%がまだ初心者の段階にある。
12%の企業はクラウド業界を観察しているが、学習のための最初の一歩を踏み出せていない。
2020年データ攻撃サーフェス・レポートでは、2025年までに全世界のデジタルデータの50%がクラウドに保存されると予測している。
企業やCIOは、クラウドベースのSaaSの特徴に魅力を感じている
CIOの70%は、SaaSの俊敏性と拡張性に魅力を感じている。SaaS採用のもう一つの原動力は、ほとんどのアプリが近いうちにクラウドベースになるだろうという期待である。
38%の企業が災害復旧を強化するためにクラウドベースのシステムを採用している。
37%の企業が柔軟性を理由にクラウドベースのシステムを採用している。
企業は特定の理由から年間予算にSaaSを組み入れている
SaaSへの支出は企業支出全体の15%未満である。
企業のSaaS予算の12%はオペレーティング・システムである。
企業のSaaS予算の10%はセキュリティ・ソフトウェアである。
企業のSaaS予算の10%は生産性向上のためのものである。
Point:SaaSの柔軟性は、民間企業や政府組織にとって魅力的なビジネスツールとなっている。以前にも増して、経営幹部は特定のニッチなニーズに対応するため、SaaSのための予算を確保している。
Source:DevSquad「103 SaaS Statistics and Trends for 2024」
Churn statistics in SaaS:SaaSの解約
SaaSビジネスの解約は主要顧客層によって大きく異なるが、業界標準は存在
エンタープライズにサービスを提供するSaaSビジネスの年間解約率は6~10%である。
SMBをターゲットとするSaaS企業の年間解約率は58%である。
許容できる解約率は5%から7%で、2023年のSaaSの年間平均解約率は5.2%だった。
月間契約企業のSaaS解約率は14%であるのに対し、1~1.5年契約企業のSaaS解約率は15%である。
SaaS企業の89%が新規顧客獲得を優先し、59%が既存顧客の契約更新を優先している。
中規模のSaaS企業は、年間売上の5%を解約で失っている。
より大きな契約を持ち、より多くの収益をあげる企業は、解約が少ない
優れたSaaS企業は解約が少なく、収益が多いため、より速く成長できる
優良SaaS企業のNRRは100%で、SaaS企業全体のNRR中央値は2022年に102%だった。
2022年の調査では、回答者の54%が、COVID-19の流行後、企業のリーダーや意思決定者はSaaSアプリケーションをより積極的に採用したと考えている。
ユーザー維持率を5%向上させたSaaS企業は、利益が25%から95%増加する可能性がある。
Point:SaaSビジネスの解約率は企業によって大きく異なり、顧客層が解約率を決定する主な要因となる。SMB向けは解約率が高く、契約コストが低い。エンタープライズははるかに高い維持率を持ち、これらには大きな契約、大きな収益を含んでいる。
SaaS sales and marketing statistics:セールス&マーケティング
販売期間や契約期間は企業によって異なる
契約期間はSaaS企業によって異なり、月額プラン、年間プラン、複数年プランを提供している企業もある。
2.5年以上の複数年契約における解約率は平均8.5%だが、このような複数年契約を提供しているSaaS企業は約11%に過ぎない。
月間契約はより一般的(SaaS企業の13%)だが、平均解約率は16%以上と高い。
48%の企業が平均1年間の契約を結んでいる。
無料トライアルを成功している企業は顧客にすぐにコミットさせていない
無料トライアルにおいてクレジットカード情報を求めない企業は、2倍の有料顧客を生み出している。
営業チームはパーソナライゼーションにより、より多くのリードを獲得している
営業担当者と電話で話したリードは、有料顧客になる可能性が70%高い。
SaaS企業は技術的な専門用語を減らし、創造的で示唆に富むコンテンツを作成
大手SaaS企業の85%がブログを持っている。
トップSaaS企業の18%が独自のポッドキャストを持っている。
SaaS企業の36%が教育コンテンツを共有するためにブログを利用している。
コンテンツ・マーケティング・システムについては、世界最大のSaaS企業の54%がWordPressを使用しているが、Hubspotを使用しているのはわずか12%である。
北米は他地域のSaaS企業にとって、依然として重要な市場である
米国は、最も成熟した収益性の高い最大のSaaSソフトウェア市場である。
2022年から2025年にかけて、アジア太平洋地域が最も高い成長率を示すと予想されている。
Point:SaaS企業は顧客を引き付けるためにマーケティングの近代化を模索している。デモで顧客を教育し、最初のタッチポイントで積極的に売り込もうとしない企業が最も成功している。
Source:DevSquad「103 SaaS Statistics and Trends for 2024」
Text by Kakeru Miyoshi(@saas_penguin)